2020-08-21 の再掲です。
なかなか楽しかったので、経緯をまとめつつ、どんなことをしたのか受験者のマナーの範囲で書き記したいと思います。
きっかけ
自分のキャリアプランに悩みがあったので、履歴書を登録してどんなところから声をかけてもらえるだろうか、今の自分にどれだけの可能性があるだろうか、と思ってビズリーチに登録しました。
そこで、たくさんの企業から面接どうですか、という声をいただき、関西で就業可能で興味があるものを実際に受けさせていただいていました。
(結局、条件や面接過程で辞退したり、落ちたりして現職のままですが)
ある時、唐突に任天堂からオファーが届きました。
オファーの内容
そこには、ある種ユニークな誘い文句(僕のキャリアに関するコメント)と、ゲームエンジニアだけを任天堂が求めているわけではないのだ、という旨が書かれていました。
言われてみれば当然なのですが、ぼんやり任天堂といえばゲームだし、それ関連の知識を持ってない自分には全く関係ない企業だと言う先入観があったので、とても驚いたのを覚えています。
自分がオファーを受けたのは、ネットワーク、またはツール開発を担当する領域の部門であり、ゲームの裏側や、開発そのものを支えるような部門でした。
(ちなみに年収は応相談となっていました)
1回目の面談
とはいえ、自分が任天堂に入社したとして活躍できる、役に立つイメージが湧くわけではなかったので、面談という形でお時間を頂戴しました。
後になって知ることですが、僕の面談を担当いただいた方はゲームキューブや、ゲームキューブの初期のゲームソフト開発に関わった方であったようで、検索するといくつかの記事が出てきました。
子供の頃遊んでいたアレらを作った人なのか、と思うと尊敬の念を禁じえません。とても良い経験になりました。
面談では、具体的な業務内容や、知っておけば良い知識などに関してお話を聞きました。曰く、オンラインゲームを支える技術、という本の冒頭を理解しておけば良い、というお言葉を頂戴しましたので自分はそれに従いました。
気づき
ここでわかったことは、Webのネットワークとゲームのネットワークの知識は根底を同じくする、ということです。
なので、たくさん新たに勉強しなければなりませんが、既に戦える道具もまた多く持っているのです。
(具体的には任天堂がAWSのイベントなどで発表したネットワークがらみのお話などを拝見すると良いです。Webをかじっている人間でもちゃんと読めるはず)
それ当然じゃん、と思うところなのですが、あまりにもゲーム界隈のネットワークのイメージがつかなすぎて、全然同じという感覚が持てていませんでした。
違いは、ゲームが関わる世界で必要とされるネットワーク接続は、その多くがステートフルなものである、というところです。我々Webに携わる人間はステートレスな世界に生きていますが、それとは真反対です。
面白そうだな、という理由だけで
ここまでで、大体意思は固まっていました。
企業にも仕事にも興味あるし、面接内容にも興味あるぞ、と。
実際転職するかどうかなんてのは、受かってから考えればいいか、という形でした。
後に、志望理由を問われて自分は無邪気に下記のように答えています。
一番の理由は面白い仕事ができそうだからです。
ユーザの心を直接動かすようなものを作っていくという仕事はそうあるものではないし、ネットワークを通じて新しいコミュニケーションの形を作っていける機会があるというのは本当に面白そうです。
第一関門 ポートフォリオ評価
おそらく合否にそこまで関わっていない気がしますが、プログラミングクイズと、今までに作ったサンプルアプリケーションの提出を依頼されます。
サンプルアプリケーション
自分は2,3個提出しました。本当はもうちょいまともなシステムが1個合ったのですがアングラだったので出せませんでした…。
Sinatraで構築されたTwitterAPIを利用するシステム。
フォローしているニュースアカウントの投稿の、評判がいいIT関連ニュースだけをSlackに通知するもの
FrontからAPIコールするAPIのサンプルアプリケーション。docker-composeのサンプルでつくっており、nginxのプロキシを使ってCORSを避けつつ複数のアプリケーションを呼んでる感じ
プログラミングクイズ
ちょっと歴のあるプログラマなら下記のサイトを知っているでしょう。
任天堂が昔、採用に使ったCodePuzzleです。
これに関してある条件の元、Puzzleを解いた成果物を提出する必要があります。
競技プログラミングなどと比べてもまさにPuzzleという難しさがあります。
なお、面接でこれらに触れられることはありませんでした!
第二関門 一次面接(技術面接)
任天堂の面接官の特徴かもしれませんが、とても良く履歴書や職務経歴書を読み込んでくれているように感じます。
自分は結構な企業のいろんな段階の面接を経験しましたが、その中でもトップクラスに丁寧な面接をしてくれます。(悪い記憶が本当にない)
1次面接のメインは技術に関する知識とコーディング能力です。
口頭試問では、知っている言語の特性、フレームワークの特性、ネットワーク、データベース、セキュリティ(暗号、Web)などに関して幅広く質問されます。
ど忘れしていると、ヒントを出してくれるので、なんとか細かい点も思い出せました。
コーディングテストは、そこまで難しいものではありません。競技プログラミングの初級ランクを広く抑えておけば大丈夫と思います。
ただ、コーディングしている様子を見られながらなので妙な焦りから問題文の意図をよく読み違えました。落ち着いて読みましょう…。
コロナ下でしたので、自分はリモートで画面共有でしたが、普段は会議室で行われるそうです。
(再帰処理、嫌いなんだよな…。)
第三関門 二次面接(技術/人事面接)
自分の場合ちょっとイレギュラーなのかもしれませんが、前半技術面接、後半人事面接という形で進行しました。
技術面接
ここでは、システム構成に関する例題とその解決のシミュレーションをしていきます。AWSの面接に似ています。
1対2の面接になります。
雰囲気はそのへんのWeb系企業と同様で、特有なラフな雰囲気でした。僕は任天堂に保守的なイメージを持っていたので(面接はスーツだろうな、と思う程度には)これは意外でした。
小さなシステムから要件を叶えていき、面接官が新たな要件や障害を加え、それの対応を見ていく形です。
30分超行いました。正直、反省点が多かったです…。ぱっといい解決策出ないですね。
少なくともリードレプリカなDBを置く構成や、レプリケーションにつよいNoSQLなDBを使う構成、日本だけでなく、色んな国の間で使われる前提のシステム構成などを知っておかないとクリアできない例が出てきます。
ネットワークがブツブツ途切れるような環境にデータを送るには、という前提には本当に困りました…。P2Pネットワーク的な発想がぱっと出る人どれくらいいるでしょうね。
人事面接
技術の方が退出、人事の方が入出され、ここから1対4になります。
技術の方々がある程度ラフな雰囲気だったのに対し、人事の方はThe任天堂という感じで、まさしく自分のイメージしていた保守的な任天堂の姿でした。
今までのキャリアに関して担当の方が一通り紹介してくれます(このシステム、他で見たことがない)
その後、志望理由を始め、色々根掘り葉掘りされます。
自分は転職が複数あったのでその理由の深堀りもかなりありました。
全体として、一般的な人事面接ですが、質問一つ一つが鋭いので、生半可に答えを用意していると死ぬでしょう。
本心で答えられるとベストです。
あ、ちなみに好きなゲームは?のようなゲームに関する設問は一切でてきませんでした。
第四関門 最終面接
2次面接から1ヶ月以上経ってます。なるほど、これが任天堂のやり方か…。(担当者の方も合否決まるまでめっちゃ長いとはいってました)
おそらく、この3次面接が決まった段階では、スケジュール調整されて見えないライバルが複数横に並んでいます。
コロナ下でしたが、最終面接は京都本社で行われました。
面接前にアンケートを記入するのですが、Paizaのスコア記入欄がありました。
ちょっと意外です。AtCoderやLeetCodeじゃないんだ、となりました。
最終面接は、1対7です。歴戦のツワモノと思われる方々と進行の方がお一人います。
質問のベースは2次面接の人事面接と同じですが、ツワモノがそれだけ揃っているので、疑問点とかあればガンガン質問が来ます。
比較的現職におけるポジション、仕事(役割)、リスクアセスメント、ストレス対処、失敗経験の深堀り、性格の傾向に絡む質問が多かったように思います。
印象的だったのは、自分が仕事で大事にしているものなどを話すと、それに対して「たしかにそれは大事だね」等感想を述べてくれたりするところです。
他社では顔色を変えない面接官を多く見ました。それに比べ、これだけ多人数な面接をされても全く圧迫感がありませんでしたし、何なら少し楽しい気持ちで去れたのは初めてでした。
この一連の面接を通して、自分のキャリアを見直せたところもあり、良い経験になりました
合否報告
10日後にメールできました。
要約すると「採用人数少ないんだ、今回はごめんね」的なことが書かれてました。
なるほど、誰か僕より強いやつがいたんだろうな、と思えるので、特にフィードバックがなくても納得の行く良い文面でした。お祈りよりずっといい。(事実はどうあれ)
まとめ
選考期間はおよそ3ヶ月強
任天堂はゲームに詳しくなくてもオファーをくれる
任天堂の面接はめっちゃ好印象
思ったよりコーディングテストはイージーだが、口頭試問の難易度は高め
自分はとても印象が良かったので、ぜひ機会があれば挑んでいただきたいなーと思います。
なお交通費は少しだけ黒字で出してくれました。